「ユダヤ教とはどんな宗教なの?」
と聞かれると、名前は知っていても、具体的な教えや特徴までは意外と説明しにくいですよね。
私も最初は「ユダヤ人が信じる宗教」という程度の理解でした。
しかし調べてみると、唯一の神への信仰だけでなく、神との「契約」や律法、安息日、食事のルールなど、毎日の暮らしと深く結びついた宗教だと分かりました。
さらに、ユダヤ人とユダヤ教徒は必ずしも同じではなく、キリスト教との歴史的なつながりもあります。
この記事では「ユダヤ教とは何か」をわかりやすく知りたい初心者向けに、基本の教えから歴史、トーラーなどの教典、生活習慣まで順番に整理します。
一緒にユダヤ教の全体像を見ていきましょう。
- ユダヤ教は唯一の神を信じる宗教
- 契約と律法が教えの重要な柱
- 安息日や食事にも教えが関わる
- トーラーは教えの中心となる教典
- キリスト教とはイエスの捉え方が違う
ユダヤ教とはどんな宗教なのか、名前は知っていても「具体的に何を信じているの?」と聞かれると意外と説明が難しいですよね。ユダヤ教では、唯一の神への信仰だけでなく、日々の生活の中で教えを実践することも大切にされています。
まずは、神との契約や律法、安息日、食事のルールなどから、ユダヤ教の教えや特徴をわかりやすく整理していきましょう。
ユダヤ教とは簡単に言うとどんな宗教?
ユダヤ教とは簡単に言うと、唯一の神を信じ、神との関係や教えを大切にしながら生活する宗教と考えると、まずは分かりやすいでしょう。
ただ、「神を信じる宗教」とだけ覚えると、ユダヤ教の特徴が少し見えにくくなります。調べていて私が重要だと感じたのが、「契約」と「律法」という2つの考え方でした。
ユダヤ教の中心となる教えは、ヘブライ語で「トーラー」と呼ばれるものに深く関係しています。トーラーは文脈によって意味の幅がありますが、狭い意味ではヘブライ語聖書の最初の5書、いわゆる「モーセ五書」を指します。
ここには、天地創造やアブラハム、モーセなどの物語だけでなく、神とイスラエルの民との関係や、生活に関わるさまざまな教えが記されています。
キリスト教やイスラム教とも関係がある
もう一つ押さえておきたいのが、ユダヤ教が非常に長い歴史を持つ一神教だという点です。
キリスト教は1世紀のユダヤ社会を背景として成立し、イスラム教もユダヤ教・キリスト教と共通する人物や伝承を持っています。そのため、この3つはまったく無関係な宗教ではありません。
| 宗教 | 基本的な特徴 |
|---|---|
| ユダヤ教 | 唯一の神、契約、トーラーなどを重視 |
| キリスト教 | ユダヤ教を歴史的背景に持ち、イエスをキリストとして信じる |
| イスラム教 | 唯一の神を信じ、ムハンマドを預言者として重視する |
もちろん、3つの宗教には神の捉え方や教典、イエスの位置づけなど重要な違いがあります。ここでは「同じ一神教だから同じ宗教」と考えるのではなく、歴史的につながりを持ちながら、それぞれ異なる宗教として発展したと理解しておくとよさそうです。
ユダヤ教は民族と宗教のどちら?
ユダヤ教について調べていると、「ユダヤ人という民族がいるなら、ユダヤ教は民族のこと?それとも宗教?」という疑問が出てきます。私もここは最初、かなり混同していました。
整理してみると、ユダヤ教は宗教の名前です。一方のユダヤ人は、宗教だけでは説明しきれない歴史的・文化的な共同体を指します。そのため、「ユダヤ人=ユダヤ教を信じている人」と単純に置き換えることはできません。
ここで少し難しいのは、「ユダヤ人」を日本でいう一般的な意味での「民族」だけに当てはめても完全には説明できないことです。ユダヤ人のアイデンティティーには宗教、祖先、歴史、文化、共同体など複数の要素が関わり、どの要素を重視するかも人によって異なります。
ユダヤ人とユダヤ教徒は同じではない
では、「ユダヤ人」と「ユダヤ教徒」はどう違うのでしょうか。
ユダヤ教徒は基本的にユダヤ教を信仰する人を表す言葉です。それに対してユダヤ人には、ユダヤ教を大切にしている人だけでなく、宗教的な実践をほとんどしない人や、自分を無宗教と考える人もいます。
逆方向もあります。ユダヤ人として生まれていなくても、所定の過程を経てユダヤ教へ改宗する道があります。ただし、改宗の方法やその改宗をどの共同体が認めるかについては、正統派・保守派・改革派などによって違いがあります。
| 言葉 | 簡単に整理すると | 注意したい点 |
|---|---|---|
| ユダヤ教 | 宗教の名称 | ユダヤ人そのものを意味する言葉ではない |
| ユダヤ教徒 | ユダヤ教を信仰する人 | 信仰や実践のあり方は一様ではない |
| ユダヤ人 | 歴史・文化・家族的背景・宗教などが関わる共同体 | 全員が宗教的とは限らない |
さらに、「イスラエル人」も別の言葉です。現代のイスラエル人はイスラエルの国民を表すため、ユダヤ人ではないイスラエル人もいます。つまり、「ユダヤ人」「ユダヤ教徒」「イスラエル人」は重なる部分があっても、同じ意味ではありません。
ユダヤ教の教えは何を大切にしている?
「ユダヤ教の教えは何?」と聞かれたとき、最初に思い浮かぶのは神への信仰かもしれません。私も調べ始めたときは、まず「唯一の神を信じること」が中心なのだろうと思っていました。
もちろんそれは大切な部分です。ただ、もう少し調べてみると、ユダヤ教では神を信じるだけでなく、神との関係を意識しながら日々をどう生きるかも重視されていることが分かります。
そのため、ユダヤ教とは何かをわかりやすく理解するなら、信仰だけを見るのではなく、神・人・生活・共同体がつながっている宗教として捉えると整理しやすくなります。
ここで注意したいのは、「ユダヤ教では全員がまったく同じ方法で生活している」と考えないことです。現代のユダヤ教には正統派・保守派・改革派などさまざまな流れがあり、戒律をどのように実践するかにも違いがあります。
唯一の神と「契約」という考え方
そこで重要になってくるのが、唯一の神への信仰と「契約」という考え方です。
ユダヤ教は一神教であり、唯一の神を信じます。そしてヘブライ語聖書には、神と人との関係を表す重要なテーマとして、繰り返し「契約」が登場します。
「契約」と聞くと、私たちが普段使う売買契約や約束事のようなものを想像しますよね。私も最初はそう考えていました。ただ、ユダヤ教でいう契約はそれよりも深く、神と人々との特別な結びつきや、それに伴う約束・責任を表すものとして理解すると分かりやすくなります。
つまり契約は、「特別に選ばれたから何をしてもよい」という意味ではありません。むしろ聖書の物語では、神との関係には教えに向き合い、それに応じた生き方をする責任も伴います。
ここは「選民」という言葉だけを見ると誤解しやすいところです。ユダヤ教における選びという考え方は、単純な民族的優劣を意味するものとして理解するのではなく、神との契約によって特定の務めや責任を負うという文脈まで見ることが大切です。
ユダヤ教の律法は何のためにある?
ユダヤ教について調べていると、「律法」という言葉が何度も出てきます。私は最初、「してはいけないことを決めた厳しいルール集」のようなものを想像していました。
ところが、ここは少しイメージが違いました。ユダヤ教の律法は、単に人を縛るための禁止事項ではなく、神の教えを日々の生活の中でどのように実践するかを示す指針として捉えると分かりやすくなります。
そのため内容も、礼拝のような宗教的な場面だけに限られません。食事、休日、人との関わり、家族、仕事など、生活のさまざまな場面と結びついています。
ここで知っておきたいのが、ユダヤ教で使われる「ハラハー」という言葉です。簡単にいえば、トーラーをはじめとする教えをもとに発展してきた、ユダヤ人の生活や宗教実践に関する規範の体系です。
つまり、古代の文章に書かれた決まりをそのまま並べただけではありません。長い歴史の中で、ラビと呼ばれる宗教的な教師・学者たちが「この教えを実際の生活ではどう理解し、どう実践するのか」を議論し、解釈を積み重ねてきました。
「613の戒め」とはどういう意味?
ユダヤ教の律法を調べると、「613の戒め(ミツヴォート)」という数字を目にすることがあります。
これは伝統的なラビ・ユダヤ教において、トーラーに613の戒めがあると数える考え方です。ただし、現代の生活で613すべてを一人の人が実践するという意味ではありません。古代エルサレムの神殿で行うものや、特定の立場の人に関係するものなども含まれているためです。
なお、現代では律法をどこまで、どのように守るかについてユダヤ教の宗派や共同体、個人によって違いがあります。「ユダヤ教徒なら全員が同じ生活をしている」と考えず、多様な実践の仕方があることも一緒に押さえておきたいポイントです。
ユダヤ教の安息日は何をする?
ユダヤ教の生活習慣を調べていると、よく出てくるのが「安息日(シャバット/シャバト)」です。「週に1日休む日なのかな?」と私は最初に思ったのですが、一般的な休日とは少し意味が違いました。
安息日は、基本的に金曜日の日没から土曜日の日没ごろまで続く、ユダヤ教で大切にされている時間です。仕事や普段の忙しさから離れ、神との関係を意識しながら、祈りや食事、家族との時間、休息などを大切にします。
背景にあるのが、聖書に記された天地創造と出エジプトです。創世記では神が6日間の創造の後に7日目を休んだことが描かれ、十戒でも安息日を守ることが示されています。また申命記では、エジプトで奴隷だった状態から解放されたこととも結びつけられています。
ここで気になったのが、「仕事を休む」とは具体的にどこまでなのかという点です。
伝統的なユダヤ法では、安息日に避けるべき「メラハー」と呼ばれる行為があります。これは単純に「体を動かしてはいけない」という意味ではなく、伝統的には39のカテゴリーに整理される特定の活動を指します。
その解釈から、正統派などでは火をつけることや調理、書くこと、電気機器・自動車の使用などを避ける場合があります。一方、安息日の過ごし方は宗派や家庭、個人によってかなり違うため、「ユダヤ教徒は土曜日に必ず○○をしない」と一律には言えません。
なぜ金曜の夜から始まるの?
もう一つ初心者には不思議なのが、「土曜日の安息日なのに、なぜ金曜の夕方から始まるの?」という点ではないでしょうか。
これは、ユダヤ暦では1日の区切りを日没から考える伝統があるためです。そのため安息日も金曜の日没前から準備を整え、日没とともに迎え、土曜の日没後に終わります。
ユダヤ教の禁止事項や食事のルールとは?
ユダヤ教について調べていると、「豚肉を食べない」という話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。私も最初は、ユダヤ教の食事ルールといえば豚肉の禁止くらいしか知りませんでした。
ところが実際には、もっと体系的な決まりがあります。ユダヤ教の伝統的な食事規定は「カシュルート」と呼ばれ、その基準に適合した食べ物が「コーシャ」です。
大切なのは、「食べてはいけない食品の一覧」だけではないこと。どの動物を食べられるのか、肉をどう処理するのか、どの食品を組み合わせるのかなど、食べ物を選んで食卓に並べるまでの過程にも決まりがあります。
特に私が意外だったのが、「食材そのものがOKなら、それだけでコーシャになるわけではない」という点です。
たとえば牛は食べることのできる動物に含まれますが、肉であれば何でも自動的にコーシャになるわけではありません。伝統的なユダヤ法に沿った屠畜や処理などの条件も関係します。
肉と乳製品はなぜ分けるの?
カシュルートで特徴的なのが、肉と乳製品を分けるという決まりです。
その背景には、トーラーに繰り返し登場する「子ヤギをその母の乳で煮てはならない」という戒めがあります。後のラビによる解釈を通して、肉と乳製品を一緒に調理したり食べたりしないという規則へ発展していきました。
厳格にカシュルートを守る家庭では、食べ物だけでなく、肉用と乳製品用で皿や鍋、調理器具などを分けることもあります。また、肉を食べてから乳製品を食べるまでの待ち時間など、細かな実践方法には共同体や伝統による違いがあります。
なぜこうした食事の決まりがある?
では、「なぜ豚肉や貝類を食べてはいけないの?」という疑問も出てきますよね。
ここは単純に「昔は衛生状態が悪かったから」と説明しない方がよさそうです。食事規定については歴史上さまざまな説明がされてきましたが、トーラーがすべての規則について現代的な意味での理由を一つずつ説明しているわけではありません。
ユダヤ教の伝統では、カシュルートを神の戒めを日常生活の中で実践することや、聖なる生き方を意識することと結びつけて理解する考え方があります。そのため、現代の衛生や健康だけを理由にすると、本来の宗教的な意味を狭くしてしまいます。
なお、カシュルートをどの程度守るかは、宗派・共同体・家庭・個人によって異なります。ユダヤ教徒だから全員が豚肉や貝類を避け、同じ方法で肉と乳製品を分けている、と一律に考えないことも大切です。
ユダヤ教の行事には何がある?
ユダヤ教の行事というと、日本では「ハヌカ」という名前を聞いたことがある人もいるかもしれません。私も最初はハヌカが特に重要な行事なのだと思っていました。
ところが調べてみると、ユダヤ教には過越祭(ペサハ)、七週祭(シャブオット)、仮庵祭(スコット)、新年祭(ロシュ・ハシャナ)、贖罪日(ヨム・キプール)など、長い歴史を持つ重要な行事があります。さらに後の時代には、ハヌカやプリムなども加わりました。
そして面白いのが、それぞれの行事が単なる「お祝いの日」ではないことです。ユダヤ民族の歴史を振り返ったり、自分自身の行動を見つめ直したり、家族で物語を伝えたりと、行事ごとに異なる意味や過ごし方があります。
| 主な行事 | どんな意味? | 代表的な習慣 |
|---|---|---|
| 過越祭 ペサハ | エジプトからの脱出を記念する | 物語を語りながら特別な食事を囲む |
| 七週祭 シャブオット | 伝統的にはシナイ山でトーラーを授かったことと結びつけられる | トーラーを学ぶなどの習慣がある |
| 仮庵祭 スコット | 荒野での生活などを思い起こす | 「スッカー」と呼ばれる仮小屋で食事などをする |
| 新年祭 ロシュ・ハシャナ | ユダヤ暦の新年を迎え、自分の行いを振り返る | 雄羊の角笛「ショファル」を鳴らす |
| 贖罪日 ヨム・キプール | 罪を悔い改め、赦しを求める重要な日 | 断食や祈りを行う |
| ハヌカ | エルサレム神殿の再奉献に関わる出来事を記念する | 8日間にわたり灯火をともす |
過越祭では「歴史を語り継ぐ」
なかでも、ユダヤ教の特徴が分かりやすいと感じたのが過越祭(ペサハ)です。
過越祭では、古代イスラエルの民がエジプトでの奴隷状態から脱出したという「出エジプト」の物語を思い起こします。家庭では「セデル」と呼ばれる特別な食事を行い、象徴的な食べ物を使いながら物語を語り継いでいきます。
つまり、歴史を本で読むだけではなく、家族で食卓を囲みながら「自分たちにつながる物語」として受け継ぐわけです。ここは、ユダヤ教と歴史の結びつきを理解するうえで印象的な部分でした。
ハヌカはユダヤ教で一番重要な行事なの?
ここは私も勘違いしていたポイントです。ハヌカは「光の祭り」として広く知られていますが、ユダヤ教の最重要行事というわけではありません。
ハヌカは、紀元前2世紀のマカバイ戦争とエルサレム神殿の再奉献を記念する、聖書時代より後に成立した行事です。一方、過越祭・シャブオット・スコットやロシュ・ハシャナ、ヨム・キプールなどには、トーラーにさかのぼる古い伝統があります。
ユダヤ教とは?わかりやすく歴史や教典から理解

ユダヤ教についてもう一歩理解するには、現在の教えだけでなく「どのように始まり、何を受け継いできたのか」を知ることも大切です。ユダヤ教には長い歴史があり、トーラーをはじめとする教典や伝統が世代を超えて受け継がれてきました。
ここからは、ユダヤ教の始まりや教典、キリスト教との違いなどを通して、ユダヤ教とは何かをわかりやすく見ていきます。
ユダヤ教の始まりや起源はいつ?
ユダヤ教の始まりを調べると、「紀元前○年に成立した」と一つの年で答えられないことに気づきます。
ユダヤ教の伝統では、そのルーツをアブラハム、イサク、ヤコブといった族長たちにまでさかのぼって考えます。そしてモーセと出エジプト、シナイ山での契約と律法へと物語が続いていきます。
一方、歴史学では現在のユダヤ教が一度に完成したとは考えず、古代イスラエルの宗教が長い時間をかけて変化し、後のユダヤ教へ発展していったという見方をします。とくにバビロン捕囚後の時代から第二神殿時代にかけて、トーラーを中心とする宗教生活や共同体のあり方が大きく形づくられていきました。
ここはかなり重要です。たとえばアブラハムについて、聖書には詳しい物語がありますが、その生涯を聖書以外の同時代資料から確認して年代を確定できるわけではありません。
モーセや出エジプトについても同様で、聖書ではユダヤ教の歴史を理解するうえで非常に重要な出来事として描かれていますが、歴史学では具体的な年代や出来事の規模などについて議論が続いています。
アブラハムやモーセとの関係
では、なぜユダヤ教の起源を説明するときにアブラハムとモーセがよく登場するのでしょうか。二人は同じ役割ではありません。
| 人物 | 聖書・伝統での位置づけ | 覚え方 |
|---|---|---|
| アブラハム | 神から呼びかけを受け、神との契約に関わる重要な祖先として描かれる | 信仰の「祖先」 |
| モーセ | イスラエルの民をエジプトから導き、シナイで神の律法を受ける中心人物として描かれる | 律法と契約の中心人物 |
創世記では、神がアブラハムに子孫や土地について約束し、契約を結ぶ物語が描かれています。そのためアブラハムは、ユダヤ教の伝統でイスラエルの民につながる重要な祖先として位置づけられています。
それに対してモーセは、出エジプト記以降の中心人物です。イスラエルの民をエジプトから導き出し、シナイ山で神から戒めを受ける人物として描かれます。トーラーそのものも伝統的にはモーセと強く結びつけられてきました。
ユダヤ教の教典は何ですか?
「ユダヤ教の教典は何?」と調べると、トーラー、タナハ、タルムードといくつも名前が出てきます。私も最初は「結局どれが聖書なの?」と混乱しました。
まず整理すると、ユダヤ教の聖典は「タナハ」と呼ばれるヘブライ語聖書です。タナハは「トーラー(律法)」「ネヴィイーム(預言者)」「ケトゥヴィーム(諸書)」の3つから成り、その中でも特に重要な位置を占めるのがトーラーです。
トーラーを狭い意味で使う場合は、創世記・出エジプト記・レビ記・民数記・申命記の「モーセ五書」を指します。ただし、「トーラー」という言葉が、より広くユダヤ教の教え全体を表す場合もあるので、文脈によって意味が少し変わります。
トーラーとタルムードの違い
特に混同しやすいのがトーラーとタルムードです。簡単に整理すると、トーラーがユダヤ教の教えの根本となる文書なのに対し、タルムードはその教えやユダヤ法について、ラビたちがどのように解釈・議論してきたのかを記録した文献です。
| 比較 | トーラー | タルムード |
|---|---|---|
| 内容 | 物語や戒めなどを含むモーセ五書 | ユダヤ法・解釈・議論など |
| 役割 | 教えの根本 | 教えをどう理解し実践するかを考える重要な文献 |
タルムードは主に「ミシュナ」と、それを詳しく議論する「ゲマラ」から構成されています。法律的な内容だけでなく、聖書解釈や倫理、物語なども含まれているため、単純な「トーラーの解説書」と考えるだけでは少し足りません。
ユダヤ教とキリスト教の違いは?
ユダヤ教とキリスト教には、唯一の神を信じることや、聖書に共通する物語を持つことなど、深いつながりがあります。私も最初は「キリスト教はユダヤ教から少し変化した宗教なのかな?」くらいに考えていました。
確かに、キリスト教は1世紀のユダヤ社会の中から生まれた宗教です。イエス自身もユダヤ人でした。しかし、その後キリスト教はユダヤ教とは異なる宗教として発展していきます。
両者をわかりやすく比較すると、特に大きな違いは「イエスをどのような存在として捉えるのか」という点です。
さらに、多くのキリスト教会では「父・子・聖霊は一つの神である」という三位一体を重要な教義としています。一方、ユダヤ教では神の唯一性を強く重視し、イエスを神として礼拝することはありません。
教典にも違いがある
教典を見ると、両者の関係がさらに分かりやすくなります。ユダヤ教ではタナハ(ヘブライ語聖書)を聖典とし、その中でもトーラーを特に重視します。
キリスト教もタナハと大きく重なる文書を旧約聖書として受け継いでいますが、それにイエスや初期キリスト教について記した新約聖書が加わります。ユダヤ教では新約聖書を自らの聖典とはしません。
| 比較 | ユダヤ教 | キリスト教 |
|---|---|---|
| イエス | メシア・神として信仰しない | キリストとして信仰の中心に置く |
| 教典 | タナハを聖典とする | 旧約聖書と新約聖書 |
| 神の理解 | 唯一の神を強く重視 | 多くの教派で三位一体を信じる |
なお、ユダヤ教にもキリスト教にも複数の宗派・教派があり、信仰や実践には幅があります。そのため「ユダヤ教は○○、キリスト教は○○」とすべてを二択で分けるのは避けた方がよさそうです。
ユダヤ教になるにはどうすればいい?
ここまで読むと、「ユダヤ人として生まれていなくても、ユダヤ教を信じることはできるの?」という疑問も出てきますよね。私も、ユダヤ教は民族との結びつきが強いため、外部から入ることはできないのではと思っていました。
しかし実際には、ユダヤ教へ改宗することは可能です。ただし、単に「今日からユダヤ教を信じます」と宣言すれば終わるものではありません。一般的にはラビやユダヤ共同体と関わりながら、教えや歴史、宗教生活について学び、実際の生活の中でも経験していく過程があります。
伝統的な改宗では、ベート・ディーンと呼ばれるラビなどによる宗教法上の審査、ミクヴェと呼ばれる儀式用の水に全身を浸す儀礼などが行われます。男性の場合は割礼、またはすでに割礼を受けている場合に象徴的な儀式が求められる伝統もあります。
ただし、ここは一律には説明できません。正統派・保守派・改革派などによって、改宗に必要な学習や手続き、宗教法の捉え方には違いがあります。また、ある宗派で行われた改宗が、別の宗派や共同体でも同じように認められるとは限りません。
改宗すればユダヤ人になるの?
伝統的なユダヤ法では、正式な手続きを経てユダヤ教へ改宗した人はユダヤ人として共同体に加わると考えられます。そのため、「ユダヤ人は血筋だけで決まる」と理解するのも正確ではありません。
一方で、宗派によって「誰をユダヤ人と認めるか」の基準には違いがあります。さらに、宗教上ユダヤ人と認められることと、イスラエルの法律上どのように扱われるかは別の問題なので、ここも混同しない方がよいでしょう。
ユダヤ教とは?わかりやすく教え・歴史・特徴をまとめて整理
ここまで「ユダヤ教とはどんな宗教なのか?」という疑問から、教えや律法、安息日、食事、行事、歴史、教典などを順番に調べてきました。
私も最初は、ユダヤ教を「ユダヤ人が信じている一神教」くらいに考えていました。しかし実際に調べてみると、それだけではユダヤ教の特徴を十分に説明できないことが分かります。
唯一の神を信じ、その神との関係を大切にする一神教です。
神との契約を背景に、教えを日々の生活の中で実践します。
安息日や食事、行事など、日常生活にも宗教的な教えが関わります。
トーラーを教えの中心に置き、長い歴史の中で解釈や学びを積み重ねてきました。
ユダヤ人という共同体には、宗教だけでなく歴史や文化なども関係しています。
特に印象に残ったのは、ユダヤ教が「何を信じるか」だけではなく、「毎日の生活をどう送るか」まで大切にしているという点でした。
もちろん、現代のユダヤ教にはさまざまな宗派があり、すべてのユダヤ教徒が同じ方法で戒律や伝統を守っているわけではありません。だからこそ、「ユダヤ教では必ずこうする」と一つの形だけで覚えないことも大切です。
- My Jewish Learning「What Is the Talmud?」
タルムード、ミシュナ、ゲマラの基本的な関係 - My Jewish Learning「Torah Study 101」
トーラーの意味やユダヤ教における学びの位置づけ - My Jewish Learning「Conversion 101」
ユダヤ教への改宗とユダヤ共同体への帰属 - My Jewish Learning「How to Convert to Judaism」
改宗までの学習や手続き、宗派による違い - My Jewish Learning「About Conversion to Judaism」
改宗とユダヤ人としての共同体・宗教的アイデンティティーの関係


