【初心者OK】ポジティブリストと適合宣言書の違いをやさしく実務目線で整理
「ポジティブリスト」と「適合宣言書」。
この2つ、名前はよく聞くけど
「結局なにが違うの?」
「どこまで対応すればいいの?」
とモヤっとしていませんか。
取引先から急に「適合宣言書をください」と言われて、正解が分からず困った経験がある人も多いはずです。
制度の話なのか、書類の話なのかがごちゃっと混ざると、不安だけが大きくなりますよね。
でも安心してください。
実はこの悩み、多くの現場で同じように起きています。
この記事では、ポジティブリストと適合宣言書の違いをやさしく整理しながら、実務で「何を考え、どう動けばいいか」を順番に解説します。
読み終わるころには、無理に断定せず、安心して対応できる考え方が身につくはずです。
- ポジティブリストは制度の話
- 適合宣言書は説明資料の話
- 根拠資料は添付で分けてOK
- 雛形なしでも自社作成で可
- 迷うときは前提を明示する
この記事では「適合宣言書」を実務目線で解説していますが、 その前提となる 食品衛生法のポジティブリスト制度 の全体像は、別記事でやさしく整理しています▼▼▼
ポジティブリストを前提に整理する適合宣言書との違い

ポジティブリスト制度を調べていると、「適合宣言書」という言葉が一緒に出てきて混乱する人は少なくありません。
制度そのものと、実務で使われる書類が、同じもののように扱われがちだからです。
ここではまず、ポジティブリストと適合宣言書は何が違うのかを、制度と実務の立ち位置を分けてやさしく整理します。
ポジティブリストとは何かを実務目線で最短理解
その“説明の形”として、適合宣言書や仕様書などが使われます(=次章につながる話)。
「使ってよいものが決まっている」という基本ルール
ポジティブリストは、超ざっくり言うと「OK名簿」です。
名簿に載っている物質(+決められた条件の範囲)だけが、食品に触れるプラスチック等に使えます。
リストにないものは、基本的に勝手に入れられない。
だから、作る側は「うちの材料はリストに沿ってるよ」と説明できるようにします。
- 材料(プラスチックの本体)がOKか
- 混ぜるもの(安定剤など)がOKか
- 「ポジティブリスト=書類の名前」ではない
- 「適合宣言書=法律で決まった固定様式」でもない
この章では「制度の大枠」をやさしく説明しています。ただし、個別の物質が“どの表に載っているか”や“条件(数値や用途制限)”は品目ごとに違い、一次情報(告示・別表)での確認が必要です。
食品そのものではなく器具・容器包装が中心
ここ、いちばん間違えやすいところ。
今回の「ポジティブリスト(器具・容器包装)」は、食べ物に入れる添加物の話ではなく、食べ物に触れる“モノ”の話です。
- 食品に触れる容器:カップ、ボトル、袋、トレー
- 食品に触れる道具:ヘラ、スプーン、保存容器など
- 表面に樹脂層があるもの(コーティング等)
ただ、制度説明としては「食品接触部が合成樹脂なら対象になりやすい」が入口です。
消費者庁は、器具・容器包装のポジティブリスト制度について「政令で定める材質」を示しており、2025年6月時点で合成樹脂が対象材質として挙げられています。
(参考:消費者庁の制度概要)
「プラスチックのコップ・容器・ラップ・袋など、食品に触れる“樹脂”は、勝手に材料を選べない」という話です。
だから取引では「その材料、大丈夫?」が必ず聞かれます。ここで登場するのが“適合宣言書”という考え方です。
- Q:「食品のポジティブリスト(農薬0.01ppm)」と同じ?
A:似た言葉だけど別の話。この記事は器具・容器包装(主に合成樹脂)のほうを扱います。 - Q:金属・紙・木も全部このルール?
A:制度の説明としては「中心は合成樹脂」。他材質は別の規制や考え方が絡むので、ここでは記載しません(個別確認が安全です)。
「あなたの製品のこの材質・この添加剤が“リストのどれに該当するか”】【どの条件(用途・温度・量など)がつくか】は、製品仕様によって変わります。ここを記事内で“全部断定”するには一次資料(告示の別表や関連通知)と個別仕様が必要で、現時点では一般論としての説明に留めています。
ポジティブリストで事業者に求められる責任の考え方
ポジティブリスト制度というと、「法律でガチガチに決められていて怖い」と感じがちです。 でも実際に事業者に求められているのは、すべてを暗記することでも、完璧な専門家になることでもありません。 ここでは、法律で決まっている部分と現場で判断する部分を分けて、責任の考え方をやさしく整理します。
法律で決まっていることと現場判断の切り分け
まず大事なのは、「法律が決めていること」と「現場に任されていること」は同じじゃない、という点です。 ここを混ぜてしまうと、「何をどこまでやればいいの?」と不安が一気に膨らみます。
- 食品に触れる器具・容器包装のうち、対象となる材質(主に合成樹脂)がある
- 使える物質はポジティブリストに収載されたものが基本
- 基準を超えて成分が溶け出さないこと
- どの資料を使って説明するか
- 説明の詳しさをどこまでにするか
- 誰が確認・管理するか
「法律で決まっている=国が書類の出し方まで全部指定している」 → これは誤りです。 ポジティブリスト制度は、“安全の基準”を示す制度であって、“実務のやり方マニュアル”ではありません。
「安全であることを説明できる状態」がゴール
ポジティブリスト対応で、事業者が最終的に目指すゴールはとてもシンプルです。 それは、「安全かどうかを聞かれたときに、根拠をもって説明できる状態」にしておくこと。
- どんな材料を使っているか把握している
- 仕入れ先からの情報を保管している
- 「なぜ問題ないと言えるのか」を言葉で説明できる
安全性を説明する手段のひとつが、適合宣言書です。 ただし、適合宣言書=唯一の正解ではありません。 あくまで「説明できる状態」を作るための道具のひとつにすぎない、という位置づけが大切です。
どこまで説明すれば十分かは、製品の種類・取引先・用途によって変わります。 そのため、「この形なら必ずOK」と断定できる訳ではありません。 実務では、説明できる根拠を積み重ねていく考え方が現実的とされています。
ポジティブリストと適合宣言書が混同されやすい理由
混同の原因って、制度が難しいから…だけじゃないんです。
実は「言葉の見た目」と「やり取りの場面」が、勘違いを量産します。
このパートは、名前が似ていることで起きる誤解と、制度と書類を同一視してしまう落とし穴を、現場の会話ベースで整理します。
名前が似ていることで起きやすい誤解
「ポジティブリスト」も「適合宣言書」も、言葉だけ見るとどっちも“OKっぽい”雰囲気があります。
さらに、「適合」って言葉が強いので、“これさえ出せば合格”みたいに受け取られがち。ここが罠です。
- 「ポジティブ」=安全が保証されている、と思う
- 「宣言書」=国の公式書類、と思う
- 「適合」=検査済みの意味、と思う
- ポジティブリスト=「使えるものの名簿」
- 適合宣言書=「説明のためのメモ(社内外向け)」
- 適合=「条件に合ってる、という意味」
「ポジティブリストの適合宣言書を提出してください」
→ この一文の中に制度(ポジティブリスト)と資料(適合宣言書)が混ざっているので、まずは“何を確認したいのか”を分解して考えるのが安全です。
制度と書類を同一視してしまう落とし穴
ここが本題。混同が危ないのは、やるべきことの順番が逆になるからです。
本来は「制度(ルール)を前提に → それを説明する資料を用意する」なのに、
逆に「資料(適合宣言書)を作れば → ルールも満たした気になる」になりやすい。これが落とし穴です。
- 対象かどうか切り分ける(食品に触れる?材質は?)
- 材料情報を集める(仕入れ先・仕様書など)
- リストの条件に沿う形で説明資料にまとめる
- とりあえず「適合宣言書」を作る
- 書いてあるから大丈夫だと思い込む
- 材料や条件の確認が後回しになる
- 何を確認したい?(材料?用途?食品接触?)
- 根拠はどこ?(仕入れ先情報・仕様書・試験結果など)
- その根拠をどう伝える?(適合宣言書にする?別資料で足りる?)
「適合宣言書」という言葉は、現場では幅広く使われ、会社や取引先によって指す中身が違うことがあります。
そのため「こういう様式が公式に定まっている」と断言できる一次情報は、一般向けには見つけにくいのが現状です。
この記事では、言葉の混同が起きる構造を整理し、次の章で実務としての“安全な作り方・伝え方”につなげます。
ポジティブリストだけでは足りないと言われる場面
「ポジティブリスト対応してます」と言っても、取引先に「それだけじゃ足りない」と言われることがあります。
これは“制度が間違っている”のではなく、相手が知りたい情報が「制度名」ではなく「中身」だから。
この章では、どんな場面で説明を求められやすいかと、なぜ書面確認が必要になるのかを、シーン別に整理します。
取引先・顧客から説明を求められるケース
説明を求められるのは、だいたい「相手が責任を持たなきゃいけない場面」です。
相手から見ると、あなたの会社の材料や工程が見えないので、“確認できる形”で安心したいんですね。
だから「使ってる容器・包材の根拠」を資料で欲しいと言われやすい。
「ポジティブリスト対応?」→「証拠は?」の流れが自然に起きる。
「日本の制度に沿ってる」だけでなく、説明資料の整備が求められがち。
説明の筋道を資料で見せる必要が出やすい。
- どんな材質で、どんな物質が使われているか
- 食品に触れる条件(用途・温度など)に合っているか
- 何を根拠に「問題ない」と言えるのか
「どんなケースで必ず説明が必要」と一律に断定できる一次情報は見つけにくいです。
ただ、実務では上記のように相手が責任を負う場面ほど、説明や書面確認の要求が強くなる傾向があると考えられます。
書面での確認が必要になる実務背景
「書面でください」と言われるのは、冷たい対応ではありません。
多くの場合、社内で説明するため、または後から証明できる形で残すためです。
つまり、書面は“相手の仕事を助ける道具”でもあります。
- 担当が変わると話が消える
- 言った/言わないになりやすい
- 社内共有や監査で説明できない
- 社内の承認・稟議に添付できる
- 取引条件の証跡として残せる
- 監査・問い合わせ時にすぐ出せる
「書面で確認したい」=「何か決まった様式が必要」という意味ではありません。
でも現場では、その“書面の形”として適合宣言書という言い方がよく使われます。
次の章で、適合宣言書は何で、どこまで書けばいいのかを具体的に整理していきます。
「必ず書面が必要」と言い切れる一次情報は、取引形態や製品によって差が大きいため見つけにくいです。
ただし実務では、社内承認・監査・責任分担の都合で、書面が求められる傾向が強いのは現実です。
適合宣言書とポジティブリスト対応の実務ポイント解説

ポジティブリストに「適合している」と言われても、現場では「それをどう伝えるのか」で悩む場面が多くあります。
そのときに登場するのが、適合宣言書という考え方です。
この章では、適合宣言書が求められる理由や、どこまで対応すればよいのかを、実務で困らない視点から具体的に整理していきます。
適合宣言書とは何かをやさしく整理
名前は立派ですが、決まった様式や全国共通ルールがあるわけではありません。
取引先に対して「ポジティブリストの考え方に沿っている」と説明するための資料、というのがいちばん近い理解です。
法律用語ではなく実務で使われる言葉
まず大前提として、「適合宣言書」という言葉は法律本文にそのまま出てくる用語ではありません。
これは、現場のやり取りの中で生まれ、広まった実務用語です。
- ポジティブリスト制度
- 対象となる材質・物質
- 基準値や条件
- 適合宣言書
- 適合確認資料
- ポジティブリスト対応資料
「法律用語じゃない=いい加減でいい」という意味ではありません。
むしろ実務では、中身の説明ができるかどうかがより強く見られます。
「適合していると伝えるための説明資料」
適合宣言書の役割を一言で言うと、「安全かどうかを説明するための整理シート」です。
合否を決める証明書ではなく、説明のスタート地点だと考えると、ぐっと分かりやすくなります。
- どんな材料・材質かを整理する
- ポジティブリストの考え方に沿っていると示す
- 相手が確認しやすい形にまとめる
ノートがあるからといってテストに合格するわけじゃないけど、説明はしやすくなる、そんな位置づけです。
- 材質表・仕様書
- 仕入れ先からの情報
- 試験成績書(ある場合)
すべてを載せる必要はなく、全体像を伝えるのが目的です。
適合宣言書の名称・項目・形式は、業界や取引先によって差があります。
「この形が唯一の正解」と言い切れる訳ではありません。
そのため、この記事では役割と考え方に絞って整理しています。
適合宣言書は法律上の義務なのか
「適合宣言書って、法律で“必須”なの?」は、現場でめちゃくちゃ多い疑問です。
結論から言うと、ポイントは“書類名”の義務ではなく、“伝えるべき中身”の義務。
つまり、義務の本体は「説明できる情報を伝達すること」で、書類はそのための道具…という整理が近いです。
必ず作らなければならない書類ではない理由
まず押さえたいのは、「適合宣言書」という名前の書類が、法律で“この様式で作れ”と決め打ちされているわけではない、という点です。代わりに求められているのは、取引の相手がポジティブリストへの適合性を確認できる情報を、きちんと受け取れる状態にすること。だから、会社や取引先によって、呼び方や形式がバラつきやすいんですね。
- 相手が適合性を確認できる情報を伝える
- 伝えた内容を後から確認できるようにする
- (立場により)義務/努力義務が分かれる
- 適合宣言書(と呼ぶ)
- 仕様書/品質保証書
- メール+添付PDF/データシート
むしろ実務では、後から確認できる手段(記録・保存)がないと詰みやすいです。
義務と実務慣行の違いを理解する
ここで、頭の中をスッキリさせる“分け方”を置いておきます。
義務=最低ライン(やらないと危ない)、実務慣行=トラブルを減らすための型(やるとラク)です。
- 相手に適合性を確認できる情報を渡す
- 方法は決め打ちされない(でも後で確認できることが重要)
- 立場によって「義務/努力義務」の差がある
- 取引先のチェックが速くなるよう1枚に整理する
- 担当交代しても回るよう保管・更新する
- 言い方をそろえる(例:適合宣言書)
「適合宣言書」という“名称”の法的な必須性は確認しづらく、一般に全国統一の様式があるとも言い切れません。
一方で、法令や公的資料では、事業者間で“適合性を確認できる情報を伝達する”こと自体は求められており、方法は特段定めないが事後確認できる手段を確保する考え方が示されています。
なぜ取引先は適合宣言書を求めてくるのか
「なんでそんな書類を求めてくるの?」と思う場面、ありますよね。
でも多くの場合、取引先はいじわるで要求しているわけではありません。
その背景には、責任の所在と確認作業という、とても現実的な理由があります。
責任の所在を明確にしたい心理
取引先が一番気にしているのは、「何かあったとき、誰がどこまで説明できるか」です。
特に食品に関わる分野では、最終的に消費者へ届く側ほど責任が重くなります。
「あなたの会社が悪い」と言いたいのではなく、 「自分たちが説明責任を果たせる材料が欲しい」という気持ちが強いケースがほとんどです。
適合宣言書の提出=責任を全部押し付けられる、ではありません。
実際は、責任の分担を見える化するために求められることが多いです。
監査・確認対応をスムーズにする目的
もう一つ大きな理由が、監査や社内確認をスムーズに回すためです。
特に規模が大きい会社ほど、「その場の説明」より「誰が見ても分かる資料」を重視します。
- 担当ごとに説明がブレる
- 確認に時間がかかる
- 監査で一から調べ直し
- 誰が見ても同じ説明
- チェックが一瞬で終わる
- 監査対応もラク
- 社内チェックリストに「ポジティブリスト対応」の項目がある
- 根拠資料の提出が求められる
- その“まとめ役”として適合宣言書が使われる
適合宣言書は「提出させるための書類」ではなく、 確認作業を早く・正確に終わらせるための“潤滑油”として求められることが多いです。
監査や確認の方法は、会社の規模・業界・取引形態によって大きく異なります。
そのため「必ず適合宣言書が必要」と一律に言える訳ではありません。
ただし実務では、確認を効率化する目的で書面が求められる傾向が強いのは事実です。
適合宣言書に書く内容と書かなくていい内容
適合宣言書って、「何を書けばOKで、どこから書きすぎ?」が一番むずかしいです。
ここでのゴールはシンプルで、相手が確認できる“最低限の情報”を、過不足なく渡すこと。
つまり、必要なことは書く、でも機密まで全部出さない…このバランスを作ります。
一般的に求められやすい基本項目
まず「基本項目」は、だいたい“誰が・何の製品で・どの範囲を・どういう根拠で適合と言っているか”が分かればOKです。
下のチェックリストは、書き方の型(テンプレ)として使えます。
- 発行元(会社名)
- 担当部署・連絡先(窓口)
- 発行日/版(更新管理)
- 製品名・型番(対象の特定)
- 用途(食品接触の想定)
- 対象範囲(部位/材質)
- ポジティブリストに沿う旨(宣言文)
- 根拠資料の種類(仕様書・データシート等)
- 必要に応じて試験情報(ある場合)
基本項目は「全部の配合を公開する」みたいな話ではありません。
相手が確認できる“筋道”が見えることが大事で、機密の中身まで丸出しにする必要は通常ありません。
「適合宣言書の必須項目」は取引先・業界で差があり、全国共通の様式があるとは言い切れません。
そのためここでは、実務で通りやすい“一般的な骨組み”として整理しています。
詳細を書きすぎないための考え方
“書きすぎ問題”は、だいたい相手に安心してもらいたい気持ちから始まります。
でも、出しすぎると機密漏えい・社内統制の破綻・更新地獄が起きやすい。
ここでは「書く/書かない」をスパッと切れるように、判断の軸を作ります。
- 配合比率・レシピを全部書く
- 社内の工程ノウハウを細かく公開
- 対象外の製品まで一緒に書く
- 更新のたびに差し替えが発生して管理崩壊
- 対象製品・対象範囲が特定できる
- 適合の根拠が“たどれる”(添付・参照でOK)
- 必要なら「別紙」「提出可能」の形で段階化
- 更新しやすい(版管理ができる)
- 相手の確認に必要?(“安心”じゃなく“確認”に必要か)
- 代替できる?(「別紙」「添付」「参照番号」で足りないか)
- 出したら戻せない?(機密・ノウハウ・取引上のリスクはないか)
最初から全部を盛らずに、「基本は本紙+必要に応じて別紙」にすると事故りにくいです。
例:本紙は“対象・用途・宣言・根拠の所在”まで。詳細は「要請があれば提出」方式にする、など。
取引先によっては、契約・監査ルールの都合で「ここまで書いてほしい」という要求が強い場合もあります。
そのときは、機密の線引き(別紙・NDA・提出範囲)をセットで調整するのが現実的です。
雛形が存在しない理由と自社作成の考え方
「公式の雛形があればラクなのに…」と思いますよね。
でも、適合宣言書にはあえて“統一様式が置かれていない理由”があります。
この章では、雛形が無い背景と、自社で作って問題ないケースを切り分けて整理します。
公的な統一様式がない背景
結論から言うと、統一様式が無いのはサボりでも未整備でもありません。
対象・用途・立場があまりにも幅広いため、1枚に固定すると逆に不都合が出るからです。
同じ様式を強制すると、書けない項目が増えます。
「確認できる情報が伝わること」を重視しています。
- 当てはまらない項目が増える
- 無理な記載・空欄が多発
- 実務に合わず形骸化
- 製品ごとに最適化できる
- 必要十分な情報に絞れる
- 責任の所在が明確
公的機関が「この様式を使え」と明示した一次資料は、一般向けには確認しづらいのが現状です。
ただし、適合性を確認できる情報の伝達という考え方自体は、複数の公的説明で示されています。
自社用フォーマットで問題ないケース
結論として、多くの実務では自社フォーマットで問題ありません。
大切なのは“見た目”ではなく、相手が確認できるかどうかです。
- 対象製品・範囲が明確
- 適合の根拠(参照先)が示されている
- 更新日・版が管理されている
- 問い合わせ窓口が分かる
- 取引先が独自様式を指定
- 監査・契約で書式条件あり
- 海外案件で提出先が複数
- 1枚で全体像(詳細は別紙・参照)
- 差し替えやすい(版管理・日付)
- 段階提出(必要時に追加資料)
Q. 取引先から「雛形ありますか?」と聞かれたら?
A. 「公式の統一様式はありませんが、当社フォーマットで適合性を説明しています」と伝え、確認観点が合うかをすり合わせるのが安全です。
一部の取引では、契約・監査要件により様式指定がある場合もあります。
その場合は自社フォーマットをベースに相手様式へ転記するなど、二段構えが現実的です。
仕入れ先からの資料と適合宣言書の関係
現場でよくあるのが、「仕入れ先から資料はもらった。でも、うちとして何を出せばいい?」問題。
ここは資料それぞれの役割分担が分かると、一気にスッキリします。
ポイントは、適合宣言書は“証拠そのもの”ではなく、証拠を束ねて筋道を見せる“案内板”だということです。
成分表・仕様書との役割分担
まず、資料にはそれぞれ“得意分野”があります。
仕入れ先資料は細かい中身が強い。適合宣言書は全体の説明が強い。
この分け方ができると、「全部を1枚に詰め込む」地獄から抜けられます。
- 入っているものの一覧(中身)
- グレードや規格情報
- 変更時の影響が出やすい
- 材質・寸法・用途条件
- 対象範囲が特定できる
- 版管理がしやすい
- 「適合」の結論を一言で示す
- 根拠資料へ案内(参照先)
- 問い合わせ窓口を一つにする
仕入れ先資料は「根拠の箱」、適合宣言書は「箱の中身を説明するラベル」。
ラベルがあると、相手はどこを見れば確認できるかがすぐ分かります。
どの資料を「根拠」として扱うかは、製品・用途・取引先の確認観点で変わります。
そのため、ここでは一般的に整理しやすい役割分担の考え方としてまとめています。
すべてを一枚にまとめなくてよい理由
「1枚にまとめる=親切」と思いがちですが、実務では逆に事故りやすいです。
まとめすぎると、更新が追いつかない/機密が混ざる/読む側が迷うが起きます。
だからおすすめは、“本紙は案内板、詳細は添付”という二段構えです。
- どこか1つ変わると全部作り直し
- 最新版と旧版が混ざる(事故)
- 機密(配合・ノウハウ)が入りやすい
- 読む側も情報過多で逆に確認できない
- 本紙は変えず、添付だけ更新できる
- 版管理がしやすい(差し替えが簡単)
- 機密は添付にして提出範囲を調整できる
- 相手が「見るべき所」だけ見られる
取引先の監査基準や契約条件によっては、提出する添付資料の範囲が変わります。
その場合でも、基本は本紙=案内/添付=根拠の発想で組むと、すり合わせが楽になります。
適合宣言書を出せない・迷うときの対応方法
実務では、「今すぐ適合宣言書を出せない」「出していいか判断がつかない」場面が必ず出ます。
大事なのは、無理に断定しないことと、相手の確認作業を止めないこと。
ここでは“炎上しにくい伝え方”と“判断に迷った時の安全ルート”を具体化します。
無理に断定しないための伝え方
断定してしまう一番のリスクは、後で条件が変わったときに撤回できなくなること。
だから、迷ったら「前提・範囲・未確定点」をセットで伝えるのが安全です。
- 「問題ありません」
- 「適合しています」
- 「すべてOKです」
- 「現時点の情報では〜と考えています」
- 「◯◯用途・条件の範囲での確認です」
- 「追加確認中の点があります」
- 「本件は、◯◯用途・◯◯条件を前提として、現時点で入手している資料に基づき整理しています」
- 「一部情報については現在確認中のため、確定次第あらためて共有します」
- 「詳細資料は要請があれば提出可能です」
公的に「この表現が正解」と断定できる一次情報は見つけにくいのが実情です。
そのため実務では、前提条件を明示する表現がリスクを下げる方法として広く使われています。
判断に迷ったときの安全な考え方
迷ったときは、「正解を当てにいく」より「事故を起こさない」発想に切り替えます。
下のチェックを順に踏めば、だいたい安全な落とし所が見えてきます。
- 対象の切り分け:食品接触?材質は?用途条件は?
- 根拠の所在:仕入れ先資料・仕様書は揃っている?
- 未確定点:不足情報は何か?誰に確認する?
- 伝え方:前提・範囲・未確定点を明示できる?
- 不明点を黙ったまま提出
- 相手の解釈に丸投げ
- 口頭だけで済ませる
- 未確定点を明示して共有
- 段階提出(本紙→追加資料)
- 確認スケジュールを提示
- 用途条件が特殊(高温・長期接触など)
- 材質や配合の変更予定がある
- 海外案件・契約要件が絡む
迷ったら「断定しない・止めない・前提を示す」。
この3点を守るだけで、実務リスクはかなり下がります。
この記事では「適合宣言書」を実務目線で整理しました。前提となる 食品衛生法のポジティブリスト制度(対象・仕組み・注意点) をまとめて確認したい場合は、下の記事が便利です▼▼▼
まとめ|ポジティブリストと適合宣言書を正しく理解して実務に活かす
ここまで見てきたように、ポジティブリストと適合宣言書は、役割も立ち位置もまったく違います。
でも現場では、この2つが混ざってしまうことで「何を出せばいいのか分からない」「断定が怖い」といった悩みが生まれがちです。
最後に、実務で迷わないための考え方の軸を、ギュッと整理します。
- ポジティブリスト:何が使えるかを決める「ルール・基準」
- 適合宣言書:そのルールに沿っていると「説明するための資料」
- 義務なのは説明できる状態をつくることで、書類名そのものではない
- 制度を前提にする(対象・用途・材質を切り分ける)
- 根拠を集める(仕入れ先資料・仕様書・必要に応じて試験情報)
- 説明用にまとめる(適合宣言書=案内板として使う)
- 分からないことは無理に断定しない
- 前提・範囲・未確定点を言葉にして共有する
- 全部を1枚に詰め込まず、本紙+添付で段階化する
適合宣言書は「提出するためのゴール」ではなく、会話をスムーズにするための道具です。
ポジティブリストというルールを正しく土台にして、説明できる状態を積み上げていく。
それが、トラブルを避けながら実務を回す、いちばん現実的なやり方です。
本記事は、現時点で一般的に整理しやすい考え方と実務の組み立て方を示したものです。
個別案件では、社内ルールや取引先条件に合わせて調整してください。


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