【どこまで止められる?】トランプ大統領の拒否権とは?民主党が勝っても法案は通らない?
2026年11月のアメリカ中間選挙で、野党・民主党が上下両院で勝利したと報じられました。しかし、トランプ大統領は民主党の法案に「拒否権」を使う考えを示しています。
ここで気になるのが、「民主党が議会で多数派になっても、トランプ大統領が反対すれば法案は通らないの?」という疑問です。
せっかく選挙で勝っても、大統領の一言で法案が止まってしまうなら、議会の多数派になる意味がないようにも思えますよね。
実は、アメリカの拒否権には一定のルールがあり、議会が大統領の判断を覆す方法も用意されています。
この記事では、トランプ大統領の拒否権とはどんな仕組みなのか、どこまで法案を止められるのかを、民主党の権限や政府閉鎖との関係も含めて、わかりやすく整理していきます。
- トランプ大統領の拒否権の仕組み
- 拒否権を覆すには上下両院の3分の2が必要
- 民主党が多数派になる意味と議会の権限
- 予算への拒否権と政府閉鎖の関係
トランプ大統領の拒否権とは?法案を止める仕組み

民主党が議会で多数派になっても、トランプ大統領には法案の成立を阻む「拒否権」があります。
では、拒否権とはどのような制度で、大統領はどこまで法案を止められるのでしょうか。
まずは、法案が法律になるまでの流れと、拒否権の基本的な仕組みを整理してみます。
トランプ氏は民主党の法案への拒否権について何と発言した?
2026年11月のアメリカ中間選挙では、野党・民主党が上下両院で過半数を獲得する見通しとなりました。
気になるのは、議会の多数派が変わったことで、トランプ大統領の政策にも大きな影響が出るのかという点です。
11月3日夜(アメリカ東部時間)、トランプ氏はFOXニュースの電話インタビューで、民主党が提出する法案に拒否権を使う考えを示しました。
「おかしな法案が送られてくれば、拒否権を使う」という趣旨の発言をしています。
さらに、拒否権による対立が続いた後には、民主党側も協議を求め、最終的に協力することになるとの見方を示しました。
意外だったのは、トランプ氏が拒否権を強調する一方で、民主党との協力にも言及していたことです。
つまり、民主党の法案を何でも拒否するというより、自分が認められない法案を止め、交渉につなげようとする姿勢が読み取れます。
今回の発言は、今後の法案への対応方針を示したものです。特定の民主党法案に対して、すでに拒否権を発動したという意味ではありません。
また、トランプ氏は共和党の敗因について、イランへの軍事攻撃も一因だったと話しています。ただし、それだけが敗因だったと断定したわけではありません。
今回の発言を見ると、今後は議会と大統領の意見がぶつかる場面も考えられます。では、そもそも拒否権にはどれほどの力があるのでしょうか。
拒否権とは?議会で可決された法案が法律になるまで
そもそも、アメリカ大統領の「拒否権」とは何なのでしょうか。
米国憲法第1条第7節では、議会が可決した法案について、大統領が署名して成立させるか、反対して議会に差し戻す仕組みを定めています。
つまり、拒否権とは、議会が可決した法案の成立に大統領が反対できる権限のことです。
ただし、トランプ大統領が議会で審議中の法案を自由に取り消せるわけではありません。まずは法案が大統領のもとに届くまでの流れを見てみましょう。
議会で法案を審議する
下院・上院で法案を審議し、それぞれが同じ内容の法案を可決する必要があります。
可決された法案を大統領に送る
上下両院で同じ内容が可決されると、法案は大統領に送られます。
大統領が署名するか、拒否するかを判断
署名すれば法律が成立します。拒否権を使った場合は、反対する理由を添えて議会に差し戻します。
ここで気づくのが、議会の可決と法律の成立は、必ずしも同じではないという点です。
民主党が上下両院で法案を可決しても、トランプ大統領が反対すれば、そのまま成立するとは限りません。
実は、大統領が拒否権を使っても、議会が一定の条件を満たせば法案を成立させることができます。拒否権は強力ですが、絶対的なものではありません。
なお、大統領が署名も拒否もしない場合にも、別のルールがあります。この点は後の見出しで詳しく整理します。
法案の一部分だけを拒否することはできる?
トランプ大統領が法案に反対するとしても、すべての内容が気に入らないとは限りません。
例えば、10項目ある法案のうち、反対するのが1項目だけだったらどうなるのでしょうか。その部分だけを削って、残りを成立させることはできそうにも思えます。
ところが、アメリカの連邦大統領には、法案の一部分だけを選んで拒否する権限はありません。
法案全体を承認、または拒否する
議会から送られた法案について、その内容全体を対象に判断します。
気に入らない条文だけを削除する
大統領が自分の判断だけで、法案の一部を取り除いて残りを法律にすることはできません。
こうした一部分だけの拒否は、英語で「ラインアイテム・ベトー(項目別拒否権)」と呼ばれます。
実は、1996年に当時のクリントン政権で、この権限を認める法律が成立したことがあります。しかし、1998年6月25日、アメリカ連邦最高裁判所は憲法に違反すると判断しました。
大統領が法案の一部を一方的に取り消すと、議会が可決した内容とは違う法律を作ることになってしまうためです。
大統領が議会に修正を求めたり、議会側が内容を見直したりすることはできます。ただし、大統領が単独で条文を書き換えられるわけではありません。
つまり、トランプ大統領の拒否権は強力でも、法案を自由に編集できる権限ではないということです。
この制限は、法律を作る議会と、それを執行する大統領との役割を分けるうえでも重要な仕組みといえます。
大統領が署名しない法案はどうなる?
トランプ大統領が法案に反対していても、正式に拒否権を使わず、署名もしなかったらどうなるのでしょうか。
署名しなければ法律にならないと思いがちですが、実はそうとも限りません。
米国憲法第1条第7節では、大統領に送られた法案について、日曜日を除く10日以内に署名も差し戻しもしなかった場合、原則として署名なしで法律が成立すると定めています。
期限までに大統領が何もしなければ、署名がなくても法律になります。
大統領が期限内に何もしなければ、「ポケット拒否権」が成立する場合があります。
この「ポケット拒否権(ポケット・ベトー)」は、議会が法案の差し戻しを受けられない状況で、大統領が署名せずに成立を阻む仕組みです。
通常の拒否権とは違い、議会がその拒否を覆す採決はできません。法律にしたければ、改めて法案を提出し、可決する必要があります。
10日という期限には日曜日を含めません。また、議会が少し休会しただけで、必ずポケット拒否権が成立するわけではありません。法案を差し戻せる状態かどうかが重要です。
つまり、トランプ大統領が法案に署名しなかったとしても、それだけで廃案になるわけではないということです。
署名の有無だけでなく、期限と議会の状況によって、法案の行方が変わる点が少し意外ですね。
トランプ大統領の拒否権で民主党の法案は通らない?

トランプ大統領が拒否権を使えば、民主党が進める法案はすべて成立しなくなるのでしょうか。
実は、議会には大統領の拒否権を覆す仕組みがあり、多数派になった民主党にも重要な役割が残されています。
ここでは、拒否権を覆す条件や議会の権限、予算をめぐる対立が政治に与える影響を見ていきます。
拒否権を覆すには?上下両院で必要な賛成票
トランプ大統領が拒否権を使ったら、議会はもう法案を成立させられないのでしょうか。
米国憲法第1条第7節を確認すると、議会には大統領の拒否を覆す「再可決」という方法が用意されています。
ただし、普通の法案を可決するときよりも、かなり多くの賛成票が必要になります。
ここで大切なのは、下院と上院の両方で条件を満たさなければならないという点です。
では、実際に何票くらい必要なのでしょうか。全議員が出席して賛否を投じた場合で比べてみます。
435人全員が投票した場合に必要な賛成票
100人全員が投票した場合に必要な賛成票
例えば、民主党が下院で過半数の218議席を確保しても、それだけでは拒否権を覆す票数に届きません。
つまり、民主党だけでは足りず、共和党議員などの協力が必要になる場合があるということです。
必要なのは定数の3分の2ではなく、原則として出席して投票した議員の3分の2です。欠席者などがいれば必要票数は変わります。ただし、議事を進めるための定足数も満たさなければなりません。
意外なのは、大統領が拒否権を使っても、それが最終決定とは限らないことです。
一方で、上下両院の過半数を取るだけでは不十分なので、実際に拒否権を覆すハードルは高いといえます。
民主党が多数派になったからといって、トランプ大統領の拒否権を簡単に無効にできるわけではないのです。
法案を止められるなら、民主党が多数派になった意味は?
トランプ大統領が拒否権で法案を止められるなら、民主党が上下両院で多数派になっても意味がないのでしょうか。
実は、アメリカ議会の仕事は法律を作ることだけではありません。米議会の公式資料を見ると、法案の審議や政権の監視、人事の承認など、大統領の拒否権とは別の重要な権限があることが分かります。
多数派は議会の指導部や委員会の運営に大きな影響力を持ちます。民主党が重視する政策を審議に乗せたり、政権側の法案を可決させなかったりできます。
議会の委員会では、公聴会を開いたり、政府の政策や行政機関の活動を調べたりできます。多数派になれば、調査のテーマや委員会運営にも影響を与えやすくなります。
閣僚や連邦裁判官などの任命には、原則として上院の承認が必要です。民主党が上院で多数派を占めれば、候補者の審査や承認の行方にも大きく関わります。
特に注目したいのが、大統領は議会のあらゆる決定を拒否権で止められるわけではないという点です。
例えば、上院による人事承認や議会の調査活動には、通常の法案に対する拒否権は使えません。政権と意見が違っていても、議会には独自にできる仕事が残されています。
2026年11月の中間選挙で選ばれた議員による新しい議会は、原則として2027年1月3日に始まります。それまでは基本的に選挙前の議会構成が続くため、新しい多数派の権限が直ちに発揮されるわけではありません。
もちろん、多数派になれば希望する政策を何でも実現できるわけではありません。上院には法案の審議を終えるために通常60票が必要となるルールもあり、党内の意見がまとまらない場合もあります。
それでも、議会の議題を左右し、政権の動きをチェックできることには大きな意味があります。
民主党の勝利は、トランプ大統領の拒否権をなくすものではありませんが、政権と議会の力関係を変える出来事といえそうです。
予算案も拒否できる?政府閉鎖につながる条件
トランプ大統領の拒否権は、法律だけでなく、国の予算にも使えるのでしょうか。
アメリカでは、政府が使うお金を認める「歳出法案」も議会で可決し、大統領の判断を受けます。そのため、トランプ大統領は歳出法案にも拒否権を使うことができます。
ただし、拒否しただけで政府の仕事がすぐに止まるわけではありません。
議会と大統領の意見が合わず、歳出法案が成立しない状態になります。
本予算に相当する歳出法も、短期間の支出を認める「つなぎ予算」も成立していなければ、資金が途切れます。
利用できる資金がなくなった機関では、原則として通常業務を停止します。これが「政府閉鎖(シャットダウン)」です。
ここで注意したいのは、政府閉鎖になっても、国のすべての仕事が止まるわけではないという点です。
米政府監査院(GAO)によると、人命や財産を守るために必要な活動などは続けられる場合があります。また、年金にあたる社会保障給付も、別の財源の仕組みによって支払いを続けられます。
2026年9月2日に成立したつなぎ予算では、連邦政府の資金を同年12月11日まで確保しています。期限までに新たな歳出法やつなぎ予算が成立するかが、次の確認ポイントになります。
つまり、トランプ大統領と民主党が予算で対立しても、すぐに政府閉鎖になるとは限りません。
大切なのは、資金の期限までに議会と大統領が合意できるかという点です。拒否権は、法案の成立だけでなく、政府運営をめぐる交渉にも影響することが分かります。
まとめ:トランプ大統領の拒否権の強さと限界
ここまで、トランプ大統領の拒否権について、法案を止める仕組みや議会との関係を見てきました。
今回のポイントは、民主党が上下両院で多数派になっても、大統領の拒否権がなくなるわけではないということです。
議会で可決された法案でも、大統領は拒否権を使って差し戻せます。
上下両院でそれぞれ3分の2以上の賛成があれば、拒否権を覆せます。
法案の審議や政権の監視、人事承認などは、議会が重要な役割を担います。
歳出法案の成立が遅れ、政府の資金が途切れると、一部の業務が停止する可能性があります。
意外だったのは、拒否権が強力な一方で、議会側にも対抗する手段が残されていることです。
民主党が多数派になった意味は、法案を成立させることだけではありません。トランプ政権の政策を審査し、政府の活動をチェックする役割もあります。
今後注目したいのは、トランプ大統領が実際にどの法案へ拒否権を使うのか、そして民主党と共和党がどこまで協力できるのかという点です。拒否権の有無だけでなく、議会との交渉にも目を向けたいところですね。
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この記事は、以下の報道および米国の公的資料を参考にしています。
※米国の制度に関する資料は英語ページです。米上院の憲法ページは今回、本文の再取得ができなかったため、リンク先の表示状況は未確認です。


